「家族が帰ってきたときのために、合鍵をポストに入れておこう」
そんな使い方をしたことがある方もいるのではないでしょうか。
植木鉢の下や郵便ポスト、メーターボックスなどに合鍵を隠しておく、いわゆる「置き鍵」です。
ところが2026年、集合住宅のポストに入れられていた合鍵を、なんと「菜箸」を使って取り出し、空き巣を繰り返していたとされる事件が報道されました。
今回は鍵屋の目線から、この少し変わった事件と、なぜポストへの置き鍵が危険なのかについて考えてみたいと思います。
集合ポストの合鍵を菜箸で取り出して侵入
報道によると、76歳の男は埼玉県や千葉県の集合住宅で空き巣を繰り返したとして追送検されました。
警察が確認した窃盗事件などは11件で、被害総額は約951万円相当に上るとされています。
特に驚くのが、その侵入方法です。
男は集合住宅のエントランスにある集合ポストをペンライトで物色し、中に玄関の合鍵があることを確認すると、菜箸を使って鍵を取り出していたとされています。
しかも、使用していた菜箸は鍵を取り出しやすいよう先端部分を曲げる細工がされていたと報じられています。
特殊なピッキング工具を使って玄関の鍵を開けたわけではありません。
住人自身が置いていた「正規の鍵」を手に入れ、その鍵を使って普通に玄関から侵入していたということになります。
さらに、被害が発覚しないよう、室内を物色した後は元の状態に戻し、使用した鍵もポストへ戻していたと報じられています。
これでは、住人が侵入されたこと自体に気付かない可能性もあるでしょう。
防犯性能の高い鍵でも「本物の鍵」を使われたら開いてしまう
最近の住宅では、ピッキングに強いディンプルキーなど、防犯性能の高い鍵が多く使われています。
こうした鍵へ交換することは、もちろん防犯対策として有効です。
しかし、どれだけピッキングに強い鍵であっても、その玄関を開けられる正規の鍵を第三者に持たれてしまえば話は別です。
鍵穴を壊す必要も、特殊な技術を使う必要もありません。
玄関に傷を付けず、普通に鍵を差し込んで開けることができてしまいます。
今回の事件は、
「どんな鍵を使うか」だけではなく、「その鍵をどう管理するか」も防犯の一部
ということがよく分かる事件だと思います。
鍵付きのポストでも金庫ではありません
「うちの集合ポストにはダイヤル錠が付いているから大丈夫」
と思う方もいるかもしれません。
しかし、集合ポストは郵便物を受け取るための設備であり、貴重品を保管する金庫ではありません。
郵便物を入れるための投入口がありますし、ポストによって構造もさまざまです。
今回の事件でも、男は集合ポストを物色して、中にある合鍵を菜箸で取り出していたとされています。
つまり、
「ポストの取り出し扉に鍵が付いている=中に入れた物が絶対に安全」
とは考えないほうがよいでしょう。
植木鉢やメーターボックスへの置き鍵もおすすめできません
ポストが危険なら、
「植木鉢の下なら?」
「メーターボックスなら?」
「玄関の近くの目立たない場所なら?」
と考える方もいるでしょう。
しかし、基本的に玄関周辺へ合鍵を隠しておくこと自体をおすすめできません。
自分にとっては「誰も気付かない場所」でも、空き巣側も同じような隠し場所を知っている可能性があります。
今回の男も、昔見た探偵もののテレビドラマで、集合ポストや植木の下などに鍵を隠している場面を見たことから犯行を思いついたという趣旨の供述をしています。
昔からよくある隠し場所だからこそ、狙う側にも知られていると考えたほうがよいでしょう。
そもそも集合ポストを使わないという方法も
少し変わった方法ですが、集合ポスト自体を使わないという方法もあります。
実際、筆者の実家は2階建ての団地でしたが、集合ポストの投入口をガムテープで塞ぎ、
「このポストは使用していません。郵便物は玄関側へお願いします」
という案内を貼っていました。
その結果、郵便物は玄関側のポストへ投函されていました。
集合ポストを使わないことで、不要なチラシや広告が入らなくなったのも意外と便利だった記憶があります。
日本郵便の約款では、集合郵便受箱の設置に関する規定は原則として3階以上の建物を対象としているため、2階建ての建物と高層マンションでは事情が異なります。
ただし、集合ポストを塞げば、どんな建物でも必ず玄関まで配達してもらえるという意味ではありません。
マンションや賃貸住宅では共用部分の管理規約もありますので、ポストを完全に使用しない場合は管理会社などへ確認しておいたほうが安心です。
Amazonやヤマト、佐川の荷物はどうなる?
最近は通販の荷物であれば、集合ポストを使わずに受け取る選択肢もかなり増えています。
ヤマト運輸では、対象となる荷物について「玄関ドア前」「宅配ボックス」「ガスメーターボックス」などを置き配場所として選択できます。
佐川急便でも、対象となる荷物について玄関前や宅配ボックスなどへの置き配を指定できます。
日本郵便のゆうパックなどについても、玄関前などを指定する置き配サービスがあります。
Amazonについても、Amazonが配送する対象商品では配送指示や置き配を利用できます。
そのため、通販をよく利用する家庭であれば、
「荷物は玄関前」
「宅配ボックスを利用」
「集合ポストは普通郵便だけ」
など、受け取り方を分けるのもよいでしょう。
ただし、クール便や代引き、貴重品など、置き配できない荷物もあります。
家族に鍵を渡すなら「隠す」以外の方法を
置き鍵をする理由として多いのが、
「子どもが鍵を忘れたときのため」
「家族が先に帰ってきたときのため」
「離れて暮らす家族がたまに来るから」
といったケースでしょう。
しかし、その便利さと引き換えに、自宅へ入るための鍵を第三者が触れられる場所へ置くことになります。
必要であれば家族用の合鍵を作って本人に持たせたり、住宅によっては暗証番号式やスマートロックなどを検討したりする方法もあります。
一度なくなった鍵が戻ってきても安心とは限らない
今回の事件で特に注意したいのが、犯人が使用後の鍵をポストへ戻していたという点です。
つまり、
「鍵がちゃんとポストにあるから大丈夫」
とは限りません。
もし置いていた鍵が一時的になくなっていたり、誰かが触った形跡があったりした場合、その鍵が戻ってきても以前と同じ安全な状態とは言えません。
第三者に使用された可能性だけでなく、鍵の種類によっては複製されている可能性も考える必要があります。
心配な場合は、シリンダー交換を検討するのもひとつの方法です。
今回の事件のように、玄関の鍵そのものを壊さなくても住宅へ侵入されるケースがあります。
「玄関に鍵をかけているから安心」だけではなく、「その鍵を他人が触れられる場所に置いていないか」まで防犯を考えることが大切です。
よくある質問
Q1. 鍵付きの集合ポストなら合鍵を入れても安全ですか?
おすすめできません。
集合ポストは郵便物を受け取るための設備であり、貴重品を保管する金庫ではありません。
取り出し扉に鍵やダイヤル錠が付いていても、製品によって構造は異なります。
玄関の合鍵は、ポストや植木鉢、メーターボックスなど、第三者が触れられる場所には置かないほうがよいでしょう。
Q2. 集合ポストを塞げば玄関まで配達してもらえますか?
建物や配送方法によって異なります。
筆者の実家は5階建ての2階にあったので、集合ポストを使用せず玄関側へ郵便物を投函してもらっていました。
ただし、特に3階以上の集合住宅では集合郵便受箱に関するルールがあります。
また、Amazon・ヤマト運輸・佐川急便などの宅配便については、対象となる荷物であれば玄関前への置き配を指定できるサービスがあります。
集合ポストを完全に使わない場合は、管理規約や普段利用している配送サービスを確認しておくとよいでしょう。
Q3. 置き鍵が一度なくなって、その後見つかりました。鍵交換したほうがいいですか?
第三者が手にした可能性がある場合は、交換をおすすめします。
鍵が戻ってきても、その間に複製された可能性があります。
特に自宅付近で紛失した・不自然な場所から見つかった場合、誰かに持ち出された可能性がある為、鍵交換をした方が賢明です。





