「ロッカーに鍵をかけたから、貴重品は大丈夫」

ジムやスポーツ施設を利用するとき、多くの方がそう考えるのではないでしょうか。

ところが2026年8月、スポーツ施設の従業員が、受付にあったマスターキーで利用客のロッカーを開け、クレジットカードを盗んだとされる事件が報道されました。

先日のコラムでは、温泉施設のロッカーで合鍵が悪用された事件を取り上げました。

今回は「マスターキー」という、少し違う角度の事件です。

 

受付アルバイトがマスターキーでロッカーを開けたとされる事件

報道によると、警視庁は8月17日、東京・渋谷区のスポーツ施設で受付のアルバイトをしていた女子大学生を、窃盗と詐欺の疑いで逮捕しました。

逮捕容疑は2026年4月、受付業務中にマスターキーで更衣室の施錠されたロッカーを開け、50代の女性客のクレジットカードを盗んだというものです。その数日後には、盗んだカードで化粧品約1万4000円分を購入したとされています。

調べに対しては「カードは更衣室で拾った」と話し、窃盗の一部を否認していると報じられています。警察は同じ手口の被害が複数あるとみており、被害総額は約100万円に上る見込みです。

注目したいのは、マスターキーの管理状況です。

マスターキーは受付に保管され、従業員であれば誰でも持ち出せる状態だったとされています。

ロッカーの鍵が悪いわけではない

今回、ロッカーの鍵が壊されたり、特殊な工具で開けられたりしたわけではありません。

施設が管理のために用意していた「正規の鍵」で、普通に開けられたとされています。

以前取り上げたポストの合鍵の事件と同じく、どれだけ錠前がしっかりしていても、鍵そのものを使われたら防げないという典型的なケースです。

マスターキーは、利用者が鍵をなくしたときや、ロッカーの点検・清掃のときに必要なもので、施設の運営には欠かせません。

ただ、1本ですべてのロッカーを開けられるということは、その1本が悪用されれば被害も全ロッカーに及ぶということでもあります。

更衣室は防犯カメラの「死角」になりやすい

「ロッカーの前に防犯カメラがあれば、すぐバレるのでは?」と思う方もいるでしょう。

しかし、更衣室は利用者が着替える場所です。プライバシーの問題から、更衣室の中には防犯カメラを設置しないのが一般的です。

出入口にカメラがあったとしても、分かるのは「誰がいつ更衣室に入ったか」まで。どのロッカーを開けたかまでは記録されません。

さらに、従業員が清掃や見回りで更衣室に出入りするのは自然なことです。怪しまれにくい立場だったことも、発覚が遅れた一因かもしれません。

財布ごとではなくカードを1枚だけ抜き取られた場合、利用者本人がすぐには気付かないこともあります。

施設側にできるマスターキーの管理方法

鍵屋の立場から、施設側におすすめしたい管理方法を挙げます。

  • マスターキーはキーボックスや金庫で保管し、誰でも手に取れる場所に置かない
  • 持ち出すときは、日時・名前・目的を記録する
  • 使用するときは、原則として2人で立ち会う
  • 電子式のキーボックスなどで、誰がいつ取り出したかの履歴を残す

「使えば記録に残る」という仕組みがあるだけでも、大きな抑止力になります。

利用者ができる対策

利用者側も、ロッカーの鍵を過信しすぎないことが大切です。

クレジットカードや現金など本当に大切なものは、持ち込む量を減らすのも一つの方法です。

又、カードの利用通知をスマホで受け取れるように設定しておけば、不正利用にもすぐ気付けます。

「鍵がかかっているから安心」ではなく、「その鍵を誰が開けられるのか」まで考えることが、防犯の第一歩です。

 

*不正利用された場合、カード会社には会員保障制度があり、本人が使っていない不正利用分は請求が取り消されます。

ただし、届け出日から60日以内~等、カード会社によって異なるので事前に確認しておくと良いでしょう。

参考:https://support.rakuten-card.jp/faq/show/20871?site_domain=guest

よくある質問

Q1. スポーツ施設のロッカーは、鍵をかけても安全ではないのですか?

ほかの利用者に対しては一定の防犯効果があります。ただし施設側はマスターキーを持っているため、管理が甘いと今回のように悪用されるおそれがあります。高額な現金やカードは、貴重品ロッカーやフロント預かりを利用すると安心です。

Q2. 更衣室に防犯カメラはないのですか?

更衣室の中はプライバシーの問題があるため、防犯カメラは設置されていないのが一般的です。出入口にカメラがあっても、どのロッカーを開けたかまでは分からないことがほとんどです。

Q3. マスターキーが無断で持ち出されたかもしれない場合は?

複製されている可能性も考えて、錠前の交換を検討しましょう。マスターキーで開くロッカーや扉はすべて同じリスクを抱えるため、対象の範囲を確認したうえで交換するのが安全です。

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公開日
2026年9月30日
担当者
須賀 真人